様々な出来事と思い出に彩られた、盛りだくさんの4月が終わろうとしています。
日本で改めての挙式を兼ねた一年ぶりの帰郷。旅の終わりの際には、静かに舞う桜吹雪が見送ってくれました。ロサンゼルスの我が家に戻ると、窓を開けた瞬間アパートメントの隣の壁を覆う無花果の葉の香りがふわっと部屋に流れてきて胸がいっぱいになったのは何故でしょうか。ちょうど一年前ここで生活をし始めた頃、同じように無花果の若い緑の独特の香りが、まだどこか落ち着かなかった私に深呼吸することを教えてくれたことを思い出します。新しい土地での春、夏、秋、そして冬を生きた私は、この一年の間にすでにカリフォルニアの風と光に沢山の思い出を結わえつけていたようです。
日本に滞在していた間は、日本の自然や造形の色彩や根本にある美しさの捉え方、また「調和」という有形・無形の芸術や型の核となる精神に触れ、改めて自分の感受性のルーツはこの国にあるのだと感じました。日本から知る美しさの表現、つまり調和の中に生きる、という一つのテーマを様々なフォームを通して表現しそれを世界と分かち合っていく、それが日本の外に生きる私に与えられたミッションであるという思いが今まで以上にはっきりと見えます。
やりたいこと、創造していきたいことが沢山ある。「こうなりたい」と先ばかりを見て生きた20代とは違って、とにかく毎日を「たっぷり」生きるように集中したこの最初の一年。そこから生まれ始めた沢山の道、再認識した自分のアイデンティティー。そして、今いる場所、生きる時間の中から湧きだすクリエティビィ。
生かす、自然を描く、合わせる、心をこめる。花を目の前にしていけるときの気持ちのプロセスに重なります。
また新しい、一年のはじまりに。
アパートメント隣の無花果の葉っぱは天に向かって伸び続けています。その葉っぱの形は、空に触れたいと願う人の手のように形を成していきます。