"風が好きです。風は香りを運び、その瞬間瞬間を人生における贈り物にしてくれるからです。風が吹くたびに、インスピレーションがクリエーションに変わります。" - 調香師 シルヴァナ カッソーリ
"調香とは、共通の感情を探し求めること―、お互いが「あ、これは・・」と言葉を漏らす瞬間、つまり魂が出会うその場所/瞬間を探しもとめることである。" ―調香師ベルトラン ドゥショフール
“香水とは分かち合うためのものです。”―調香師ジャン=クロード エレナ
これまで、香りという仕事に関わることが出来幸せだと感じた瞬間は、心の深い部分に響いてくる、美しくて強い言葉の数々に出会えた時でした。(そしてそれらの言葉は、彼らのつくる「香る水」に正直なほど反映されている)
私は香りのスペシャリストでもジャーナリストでもなく、香水を売りたいと思っているわけでもなく、特に今後は香水に関わっていくのかもわからないし、今は予定もない。それでも、私が彼らの香りを伝える役目をいただいていた時、心に湧き上がる熱いものを感じながら、そしてあるときは夢中になって香りの話をしていた自分がいたのは、本当にただ美しいと思える、そんな言葉がその香水瓶の中に存在していたからだと思います。そこに、柔らかい原石のような美しさがあったからだと思います。物や商品ではなく、そういうことに触れていたいと思うようになり、一人で仕事をはじめ、だからこのサイトのaboutに同じようなことを記しました。
それでもやはり、「香り」というものに関わってこられたことは、自分にとって本当に幸せなことでした。何故なら、香りとは見えないものを見ようとする心そのものだと思うからです。
毎日目に見えないものを見つめることを必要とされる中で、本物とは一体何かということ、それを理屈でなく直感で感じ取ることを厳しく養ってもらったことは大きかったと思います。見えるものの方が、いくらでも加工したり装飾したり、繕うことが出来る。けれど見えないものは、そうはいかない。そこにあるもの、そこから感じるものがすべてで、何も誰も騙すことはできない。
本当に素晴らしい香りは、自然界のあり方そのものを映し出します。常に変化をし、立つ鳥後を濁さずというように、美しく静かに循環の中へと戻っていく。相手との関わり合いによって生き、活かされ、生かす。自分を一番自分に近い部分へと誘ってくれる。そして、それは何も特別なものではなく、すべての人間が根源的に持っている美への感受性に語りかける。エネルギーを与えてくれる。
私はやはり、白い花と黄色い花の香りが好きです。オレンジブロッサム、ジャスミン、フリージア。匂いなら、太陽の匂いが一番好きです。そこに、自分が自分に最も近くあるための道標があると思います。
今週は、確実に春の気配が空気の中にありました。ひとりでこっそり歌う鼻歌、身に纏った春の香り、それだけで駅まで15分の道のりが今日は30分でもいい、そう思えます。香りが教えてくれる事とは、美や悦びは、やはり自分で見つけ感じとっていくものである、ということだと思います。
*写真は動くたびにジャスミンの髪飾りが香ったケーララの女の子。いつの日か娘ができたら、Jasmine/茉莉花と名付けたい。